マリアビートル・伊坂幸太郎・あらすじ/感想・疾走感あふれる殺し屋シリーズ第2作目レビュー

ヤギの私生活

こんにちはヤギです

この回紹介する本は「マリアビートル / 伊坂幸太郎」です

伊坂幸太郎さんについて

今や読書家の中で知らない者はいない実力派作家の伊坂幸太郎。1996年 – 第13回サントリーミステリー大賞佳作で初受賞して以来、数々の名作を書いてきました。彼の特徴と言ったらまさに、大量の伏線回収からの予想外の結末を読者に食らわせること。また、複数の作品がシリーズ化してつながっていたり、登場人物が名前は違っても似た形で他作品に登場したりと、ユーモアあれる世界観で読書界を魅了しています

今回紹介する「マリアビートル」は、得意とする殺し屋シリーズ3部作の第2作目となります先にいいますが、この3部作は繋がりがありますがどの順番で読んでも単体で楽しめるようになっています

あらすじ(ネタバラなし)

幼い息子の敵を企てる、アルコール依存症の元殺し屋「木村」。木村の息子をビルの屋上から落とした、表上は優等生で容姿端麗な中学生「王子」。闇社会の大物「峰岸」からの依頼を受けたという腕利きの殺し屋二人組「蜜柑」「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の中で、狙うものと狙われるものが交錯する。どこにも逃げ場のない新幹線の中で、先の読めないハラハラ展開が読者を伊坂ワールドに引き込む。

レビュー

読書初心者でもかなり読みやすい作品

個人的に伊坂さんの本はどれも読みやすいと思う。というのも彼は、情景描写が極めてうまいからだ。

彼の作品は多くの登場人物が出てくるうえ、伏線の数やどんでん返しの大胆さも並大抵のものではない。しかし、これまで彼の作品を読んでいてよくわからないとなったことがないのだ。

このマリアビートルも登場人物1人1人の目線でテンポよく物語が進んでいくため、内容理解に苦しむことはない。

登場人物の設定に凝っている

彼の作品にでてくる、登場人物は一見したら、いてもおかしくはないような存在。けれども伊坂先生の手にかかるとそんなキャラクターも不思議と私たちに印象強く残る。

また、登場人物の多くが相互に関係しているため、(だいたいは本の後半戦でわかってくるのだが)飽きることのない人物設定にもなっている。読者が毎回その作品の中のある人物に共感したり、応援したりして感情移入してしまうのも伊坂マジックに違いない。ちなみに今回僕は「天道虫」に感情移入してしまった。

殺し屋作品なのに怖さを感じさせないユーモアさ

読者の中には「殺し屋か。ちょっと怖いな」って思う人いるかもしれない。だが、そこは全く問題ない。マリアビートルはもちろん人を殺すシーンが描写されるが、生々しすぎないとため苦手な人もダメージ少なく読み進められる。

一方で、登場人物の発言や心的描写がユーモアあふれていて、クスっと笑うことが多々あった。

多彩な危機の切り抜け方がたまらない

どうやら伊坂先生は頭が良すぎるようだ。僕らには思いつきもしないカラクリで危機を乗り越えたり、戦闘するシーンを設定している。読むと「なるほど笑」となることばかり。一体だれがどう狙われて、逃げ場のない新幹線のなかで奮闘するのか。ここまで言われると気になるだろう

僕は「天道虫」の戦闘シーンがドキドキした。ぜひ一度でいいからこの世界観にはまってほしい

読者の頭の中で広がる創造(ネタバレ少しある)

最後のシーンで「木村の根性」を感じるシーンがあった。

銃で打たれた木村は、死んだと思われていたし、実際死んだ同然で描写されていた。しかし、最後に木村は一命をとり止めたと書かれている。ただ、彼が銃で撃たれてからこの復活のシーンまで木村の心情の描写はない。

これもまた、伊坂さんの工夫だと思う。読者には木村が死んでからの他の殺し屋たちの展開に集中させ、最後に木村の存在に今一度気づかせて、彼が銃で打たれた後何を考えていたのかを想像させる。実に巧みな書き方だ。

僕は、たとえアルコール依存症でしょうもない父親でも息子のためには死ねないという彼の男としての根性と愛を感じて感動した。

まとめ

今回はマリアビートルについてレビューしました

殺し屋作品でありながら、子供のために必死になる父親の姿や、いかにも運が悪い「天道虫」が印象に残ったいい作品でした。気になった方はぜひ読んで見てください

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