『十字架のカルテ』知念実希人 あらすじ/感想/精神病への知見を深められる現代に必要な一冊

大学生活

あらすじを読んだ瞬間に興味をそそられたこの作品。

作者の知念実希人さんは小説家であり医師でもあるすごいお方。医学の専門性の高い内容を小説にしてくださり読みやすさ抜群でした

メッセージ性のあるものというよりも、読むことで知識を得ることができたほうが大きい作品

日常生活ではなかなか触れることのない精神鑑定医の世界。知らないことのほうが多い。これを機に少し目を通してみてほしい

過酷で精神病のまさかという展開ばかりです、、

あらすじ

正確な鑑定のためにあらゆる手を尽くす、日本有数の精神鑑定医・影山司の助手に志願した新人医師・弓削凛は、犯罪者の心の闇に対峙してゆく。影山のもとで行う鑑定には統合性失調、詐病、解離性性同一障害など様々な事件の容疑者の闇があった。多くの事例を扱う中で成長していく弓削。そしてなぜ、弓削凛は精神鑑定医になったのか。そこには彼女が精神鑑定医になることを決めた出来事があった、、、。

刑法39条の存在

多くの小説で重大事件がテーマにされているが、この小説の違うところは事件の容疑者に精神疾患があること。日本には刑法39条という法律がある

  • 心神喪失者の行為は、罰しない。
  • 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

この条文にあてはまると、釈放こそはないが精神病院に送られて無罪で終わりなんてことがある。ニュースでもたまに聞いたり、学校の授業で精神疾患の人物を無罪にすることは正しいのか話し合った記憶がある

本当にこの判断は正しいのか、倫理的なのか。本を通して考えさせられた

本作は鑑定医の目線から容疑者の精神を診断している。どのように診断しているのか、なぜそのような診断ができるのか。そして、なぜそのような疾患を患うことになったのか。この点にもぜひ注目してもらいたい

罪は誰が償うのか

人の命を奪う行為は犯罪の最上位に位置する。当然ながら容疑者は厳しく裁かれないといけない。しかし、容疑者が精神疾患であった場合。一体だれが罪を償うのだろうか。

「彼は正気じゃなかった」そんな理由で遺族が許すわけがない。

しかし日本には刑法39条が存在する。たとえどんなに残忍な犯罪であったとしても、容疑者本人が精神疾患を患っていて、意思をもっての犯罪ではないとき、償われない犯罪となる。

この刑法をどうみるか。正しいのか間違っているのか。正解はない。これが人が人を裁くことの難しさである。

詐病

詐病というものをご存じだろうか

経済的または社会的な利益の享受などを目的として病気であるかのように偽る詐偽行為である。 

Wikipedia

本当に精神疾患で無実が認められる事例がある一方で、精神疾患ではないのに罪逃れのために精神疾患を演じる人間が存在する。精神鑑定医の鑑定の難しさは「詐病」の可能性を加味して鑑定を行わないといけないところだ。実際に本に登場している患者の中には巧みな演技で詐病を行う者が出てくる。影山と弓削がどのように詐病を見抜くのかにも注目してもらいたい

そして、詐病の存在を知っておくことは私たちが生きる上でも必要だ

弓削の過去とは(ネタバレあり)

この本は二つの話を同時進行で扱っている。1つは弓削の精神鑑定医としての生活。もう1つは精神疾患と弓削の過去の関係。ネタバレにはなるが弓削は過去に親友を殺された。しかしその容疑者となった女は精神疾患があるということで無実となっている。その女が再び殺人を犯し、弓削らのもとで鑑定を受けることになったのだ。結論から話すと、少々この話の展開は都合が良すぎと感じることもあったが、うまい具合に弓削が過去の清算をしていて面白い要素もたくさんあるとおもう

なによりも精神疾患とは何なのか大まかではあるが一つの知識として自分の中に具体例とともに蓄えられたのは大きな収穫でしたテンポのいい話の展開で、思わず診断結果が気になりどんどん読み進めてしまう作品いつも同じジャンルばかりで新しい分野に挑戦してみたい人にはかなりおすすめ

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